2020年から続くコロナウイルス蔓延は、私たちの生活を大きく変えるものであります。
マスク着用での外出や在宅勤務、リモートワーク、ソーシャルディスタンス等これまであまり日常的に使用しなかった言葉などが今では日常の会話の中で飛び交う状態となっております。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所は、、2020年4月に、香川県高松市に、山本・坪井綜合法律事務所を設立しており、コロナウイルス流行の真っただ中での設立でした。
日々の法律相談の中で、コロナウイルスの影響を受けての相談を多数お受けしてまいりました。
その後、当山本・坪井綜合法律事務所は、2021年4月、福岡オフィス開設に伴い法人化し、弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所となり、現在では、香川オフィスと福岡オフィスの2オフィスとなっております。
四国の法律相談の現状と九州の法律相談の現状を踏まえ、当事務所へ寄せられる法律相談を一元化し、コロナウイルスの蔓延がどのように影響しているのか等をこの「コロナウイルスQ&A法律問題コラム」で回答していきたいと思います。
なお、あくまでも当事務所の弁護士の意見であることをご了承いただき、状況や内容によって当然異なることをご理解ください。
「皆様の不安を少しでも解消したい」、弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所は、そんな思いから生まれた事務所です。
コロナウイルスに負けず明るく豊かな社会をみんなで築いていけることを切に願っております。

離婚問題とコロナ

コロナの影響により、会社の命令により旦那の仕事がリモートワークになり、これまでの生活と異なり、夫の自宅にいる時間が多くなり、夫の会話が多くなったことはよかったのですが、その分、喧嘩が増え、これまで見えなかった一面が見えるようになり、離婚を考えています。このような場合に離婚できますか?

喧嘩が多くなったことなどだけでは、離婚事由となりません。
コロナの影響により、リモートワークが増加し、また残業が減ることで自宅にいる時間が多くなる方が増えています。
これにより、これまでの夫婦の関係性が変化し、夫婦関係が改善した人もいる反面、喧嘩が増えたり、残業減少による給与の減少など新たな家族問題も増加する夫婦も多数います。
昨今、多いご相談には以下のような相談があります。

・自由な時間が無くなり、相手の言動にストレスを感じるようになった
・相手の小言が増え、喧嘩の回数も増えた
・自宅にいても家事や育児を手伝ってくれないことに嫌気がさした

これらは、性格の不一致や価値観の違いといった問題に繋がるかと思われますが、これは法律上離婚事由として明記されておらず、直ちに裁判上の離婚原因となるものではありません。
離婚は、まず裁判外での話し合いをしたうえで、協議離婚を目指し、話し合いでまとまらない場合には、家庭裁判所の調停手続きの中で時間をかけて話し合いをすることになります。
家庭裁判所の調停手続きの中で、離婚合意に至らない場合には、離婚訴訟を提起し、離婚事由の有無の判断を求めることとなります。

また、離婚まで考えるということは、決してコロナに起因する出来事だけが原因ではなく、それまでにも原因があったのではないでしょうか。
直ちに離婚理由とならないケースであっても、性格や価値観が合わないということで離婚訴訟に至っているケースは意外とたくさんあります。
離婚をすると決意しているわけではなく、うまくいかない関係性に悩まれていて、漠然と離婚を考えている方も多いのではないでしょうか。
家庭裁判所では、離婚の話だけではなく、円満調停と言って、夫婦関係を改善するための手続きも存在するため、婚姻関係に悩んだ場合、円満調停の申し立てを行い、調停の場で第三者に関与してもらい夫婦関係を調整していくのも一つの方法です。

借金問題とコロナ

コロナにより、仕事が減り、現在の生活を維持できなくなりました。
借金をどうにかしたいです。

借金の額や収入状況等に応じて、任意整理、自己破産、個人再生の手続きをご説明しております。
まず、ご相談者様に不動産があり、不動産を残したうえで、債務を返済できるように調整したい場合には、個人再生手続きの可否を検討します。
一定程度の収入があり、住宅ローンの返済の目途がある場合には、個人再生手続きによることができる場合があります。
不動産を残すことを希望しない場合や個人再生手続きが困難な場合には、自己破産の手続きの可否を検討します。
債務の内容がギャンブルや投資等の債務ではなく、コロナウイルスの影響で仕事が減少し、収入が少なくなり生活費が不足して借り入れを行った場合には、自己破産手続きにより、債務の免責が認められる可能性が高いため、自己破産手続きを検討することになります。
なお、債務総額が著しく大きい場合には、任意整理では到底返済することが困難であり、早い段階で自己破産を検討することが望ましいです。
自己破産の手続きも、弁護士費用や裁判所に支払う費用などが必要になってくる場合があるため、適正な手続きができるよう早めに相談を行い、対策を考えていく必要があります。
最後に、債務総額が少なく、返済の目途があるが、現在の収入では支払い額を分割して返済することが困難な場合に、分割金の額を下げてもらったり、利息分をカットしてくれないか等の交渉を行う手続きとして、任意整理があります。
こられは一例ですので、実際には個別具体的なお話をお聞きした上でより適切な手続きを選択することになります。

労働問題とコロナ

会社が、コロナ感染拡大防止のため、会社を休業することになった場合、従業員は給与をもらうことができますか。

会社が、コロナ感染拡大防止のため、自らの判断によって休業する場合には、その会社の従業員に対し、賃金全額を支払う義務があります。
賃金は、従業員の労務の提供の対価として支払われるものであるため、会社が休業した場合、労務の提供がない場合には、賃金は発生しません。
しかし、会社の都合で労務提供ができないにもかかわらず、賃金が支払われないのでは、従業員の不利益は著しいです。
そこで、従業員の最低限度の生活を保障すべく、労働基準法は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、「休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならない」と規定されており、使用者の「責に帰すべき事由」とは広く解釈されており、経営者として不可抗力を主張できないすべての場合と解釈されています。
つまり、会社が休業するに際して、よほどな理由がない限り、従業員に対し、労働基準法上の休業手当は支払われることになります。
また、同様に、会社が休業する理由によっては、民法上、従業員は会社に対して賃金全額を請求する余地もあります。
今回のご相談のように、会社が、コロナ感染拡大防止のため自らの判断によ  り休業する場合には、従業員は休業手当だけでなく賃金全額を請求する余地がありますが、緊急宣言を受けて、会社が休業せざるを得ない場合等は、在宅勤務の可能性がない職種などかを考慮して、会社の責に帰すべき事由があるかを個別に判断し、賃金全額または休業手当を請求しうるのかを検討することになります。

私は、コロナの影響で在宅勤務を会社から命じられ、在宅勤務をしていました。しかし、会社から突然、「コロナによる不況で売り上げが下がっているから給与を1割減ね。また、会社に出社せず、在宅勤務だから賃金カットでも大丈夫だよね」と言われました。

会社が、労働者の給与を変更する場合には、労働者の個別の同意がなければ、労働条件を一方的に切り下げることはできず、コロナの影響で売り上げが下がった場合や在宅勤務の場合であっても、給与の減額について労働者個々との同意を取り付けない限り、減額することは認められません。
労働契約法8条は「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件をへんこうすることができる」と規定しており、労働条件の変更に個別の合意を求めています。
賃金を上げる際には、労働者が異議を唱えることがないという推認が働くことから、黙示の合意が認定できますが、賃金を下げることは、労働者の自由な意思に基づく合意が必要となります。
労働者は、会社に従属的な関係であることに鑑み、会社に対して、意を唱えられない可能性があるため、労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在しなければならないと解釈されており、労働者が合意しているように見える場合であっても、労働者の自由な意思に基づくものでなければ、合意が無効となります。
よって、本件のご相談のように、会社は一方的に賃金を減額することはできないため、従業員の方は、労働基準監督署ないしは弁護士に早急に相談することをお勧めします。

私は「非正規雇用」です。契約社員として2年間の有期労働契約で、6年間契約の更新を繰り返して勤務してきましたが、会社から新型コロナの影響で解雇すると言われ、どうしたらよいしょうか?

昨今、コロナの影響による解雇が増加しており、当事務所でも「コロナの影響で解雇された」という相談も多く寄せられています。
また、コロナを理由にしていなくても、会社として「コロナによる収入の減少が理由で従業員を減らしたい」という思惑があり、ただそれを理由に解雇することが難しいため、別の理由をつけて解雇をしているのではないかと思われるケースも増えています。
まずは、たとえ非正規雇用であっても「簡単に解雇はできない」ということをご説明します。 ご質問のケースのような有期労働契約の場合の解雇(雇止め)は、期間満了なのか、期間途中なのかで、ルールが変わってきます。
期間満了の場合に雇用を打ち切ることを「雇止め」といい、契約期間の途中で契約を打ち切られる場合を「解雇」といいます。
雇止めの場合、期間が満了したのだから更新するかどうかは自由だと思われがちですが、決してそんなことはありません。
労働契約法では、一定の場合は、解雇の場合と同様に、雇止めにも正当な理由が必要であると規定しています。その一定の場合とは、例えば、過去に更新が繰り返されていたり、更新することが約束されていたなど、働いている方が更新されることに対して期待する事情がある場合です。
その判断にあたっては、更新回数や契約の通算期間、使用者の言動、契約書の記載内容、業務の内容が一時的なものかなど色々な事情が考慮されます。
また、労働契約法上、解雇の場合は、契約期間途中の解雇は、約束した契約期間の途中で契約を打ち切られることとなるため、より厳格な規制が及んでおり、解雇する「やむを得ない事情」が必要とされています。 いずれにしても、単に「コロナの影響で経営が厳しい」「仕事がない」などという理由では、契約期間途中の解雇は認められません。

コロナに感染の疑いがあるとして自宅待機となりましたが、その際、会社から「コロナ感染の疑いがある者は、一律に年次有給休暇扱いとします」と言われてしまいました。熱が特別高いわけでもなく、働くことのできる体力があるのに、出勤が許可されないだけでなく、有給まで消化されてしまうことに納得できません。

年次有給休暇は、原則、労働者が取得したいと言った時季に与えられることになっています(労基法39条5項)。
逆にいうと、使用者が、労働者に対して年次有給休暇を一方的に取得させることはできません。そのため、使用者が、労働者に対して、コロナの疑いがあるとして、一律に自宅待機等を命じる場合であっても、年次有給休暇を取得するという扱いをすることは基本的に認められません。
そして、使用者は、労働者に対して「休業」を命じる場合、労働基準法26条に基づき、その休業が「使用者の責に帰すべき事由」によるものであれば休業手当(平均賃金の60%以上)を支給する必要があります。使用者の休業命令に「使用者の責に帰すべき事由」がある場合か否かは、以下のように考えられています。
(1)感染した人を休業させる場合
この場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当しないと考えられるため、使用者から休業手当は支払われない可能性が高いです。
(2)感染が疑われる人を休業させる場合
このような状況であっても職務の継続が可能であるときには、使用者の自 主的判断で労働者を休業させることになるので、「使用者の責に帰すべき事由」に該当することになります。そのため、この場合には労働者は、使用者から休業手当が支払われる可能性が高いです。
これはコロナに感染しているか分からない時点で労働者に発熱がある場合であっても、使用者の自主的判断で労働者を休業させていることに変わりはないため、休業手当が支払われる可能性が高くなります。
また、コロナの影響で事業の休止が余儀なくされた場合にも当然休業手当が支払われる可能性は高くなります。

もっとも、従業員が、自ら年次有給休暇を取得することは全く妨げられていません。また、使用者との合意によって、事後的に年次有給休暇を取得したものとして処理することも許容されています。

新型コロナウィルス感染症によって内定先の会社の業績が良くなく、採用内定を取り消すとの連絡を受けました。自分は採用内定通知を受け入れないといけないのでしょうか。

令和3年9月22日、厚生労働省は、採用内定を取り消された令和3年春卒業の学生が同年8月末時点で136人いた旨発表しました。令和2年春卒業の学生の211人からは減少したものの、例年より多いのは明らかです。
そもそも採用内定が出たときの法律関係についてですが、採用内定者も内定先の会社との間で「就労始期付労働契約」が成立しているものと考えられています。つまり、採用内定者と会社との間では、令和〇年〇月から就労を開始する(してもらう)という内容の労働契約が成立しているのである。そのため、会社は、その契約を無視して自分勝手に採用内定を取り消すことはできないのです。

このように採用内定者は、会社とすでに就労始期付労働契約を締結しているため、コロナ禍を理由とした内定取消しは、コロナ禍が招いた経営上の理由による整理解雇と同様にその適法性が判断されます。そして、整理解雇について裁判例は、①人員削減の経営上の必要性、②整理解雇回避努力義務の履践の有無、③合理的な整理解雇基準の設定とその公正な適用(人選の合理性)、④労使間での協議義務の実行を判断要素としてその有効性を判断しています。
③人選の合理性を判断する際には、(1)本採用正社員、(2)本採用使用期間写真、(3)採用内定者、(4)非正規労働者という序列で判断されてしまうため、採用内定者は本採用正社員より採用取消が認められやすくありますが、単に会社の業績の先行きが不透明等という抽象的な理由での内定取消しは認められない可能性が高いです。さらに、政府が、主要経済団体等に対して、「最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じること、やむを得ない事情により採用内定取消し又は採用・入社時期の延期を行う場合には対象者の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、対象者からの補償などの要求には誠意をもって対応すること」を求めていることも考慮すると、採用取消が有効か争う余地は十分ありそうです。
内定先の会社より内定取消の通知を受けた方がいらっしゃいましたら、素直にその通知を受け入れるのではなく、一度弁護士までご相談することをお勧めします。

刑事事件問題

持続化給付金の詐欺を行ってしまい、警察から捜査をうけており、今後どうなるのか不安です。

昨今、持続化給付金による詐欺が事件化し、逮捕されるケースなどが増加してきております。
持続化給付金は、売り上げが減少した個人事業主に対し、その売り上げの減少を補てんすべく設けられた国の制度ですが、これを悪用し、実際には、個人事業主としての実態がないにもかかわらず、それがあるかのように装い、持続化給付金を申請し、金銭の交付を受けた方が多数います。これは、詐欺罪に該当します。
また、その悪用をより考え、持続化給付金の申請のために名前を借り、名前を貸した人に対し、10万から50万円くらいの報酬を与え、申請を行った方等がおり、そのようなケースでは、詐欺の被害額も多額になり、悪質なケースとなっております。
しかし、その名前を貸した人も持続化給付金の申請に協力するということを知っていた以上は、詐欺の共謀共同正犯に該当しうるものであり、警察から捜査を受けている方などは少なくありません。
このように、持続化給付金の虚偽の申請を行った人は、詐欺罪に該当し、悪質なケースは在宅捜査ではなく、逮捕されています。
詐欺罪の場合、罰金刑はないため、略式起訴はありません。検察官が被疑者を起訴し、裁判になるか起訴猶予処分として不起訴になるか、いずれかの結論になります。
持続化給付金詐欺においては、詐欺の金額、被害金の返還の有無、関与の程度(名前を貸しただけか否か等)等を総合的に考慮し、検察官が判断しております。
持続化給付金詐欺を行ってしまったかもしれないと思った方は、まずは弁護士に相談し、今後の対策を検討していきましょう。

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