成年後見
お父さんがよく通帳をなくすようになり銀行から口座を凍結され困っている
母が兄弟の財産を相続したが認知症のため遺産分割の手続きができず困っている
兄が負債を抱えており清算させたいが、認知症のため理解してくれない
当事務所には、このような相談が多く寄せられております。
認知症により判断能力が低下してしまった場合、契約をする能力が制限されてしまいます。これにより、財産の管理、不動産の売却や賃貸、遺産分割、債務整理等、様々な法律行為をご自身でできない状態となってしまい、ご本人やご親族の方にとって不安な状況となってしまいます。
このような場合に活用できるのが成年後見制度です。
成年後見制度とは簡単に言えば、判断能力が低下し、ご自身で契約をするのに不安がある、あるいは契約や財産の管理ができなくなってしまった方について、ご本人やご家族が裁判所で手続きを行うことで、裁判所がご本人に代わって手続きを行う代理人を選任してくれます。
当事務所では、多くの後見申立案件を扱っております。
中には緊急の案件もあり、早い時にはお話をいただいてから2週間ほどで申立を行うこともあります。
制度についても一般的には理解が難しい部分があり、利用をためらわれている方も多くお見掛けいたします。
まずはどんな制度か知ってみたいというご相談でも構いませんので、ぜひ一度ご相談ください。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスでは、成年後見制度に関する問題を数多く取り扱っております。
成年後見制度のご利用を検討されている方は、是非一度、ご相談いただければ幸いです。
皆さんは、成年後見制度をどの程度ご存知でしょうか?
以前よりは随分知られるようになったのではないかと思いますが、詳しく知っておられる方は少ないのではないでしょうか。
しかし、総人口に占める高齢者の割合が増加し、認知症という言葉が身近になった現代においては、いつ直面してもおかしくない問題です。
ここでは、成年後見制度とはどのような制度なのか、どういった場合に成年後見制度の利用を考えるのか、どうすれば利用できる制度なのかをご説明させていただきます。
少しでも、皆様のお役に立てれば幸いです。
もっと詳しくお聞きになりたいという方は、ぜひ一度、弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所までご相談ください。
目的について
成年後見制度というのは、判断力の低下した方の、意思決定を支援し、その財産を適切に管理し、日常生活を守るための制度です。
時々誤解があるのですが、寝たきりで動けない方や、僻地におられ移動が困難な方、手が不自由で文字が書けない方などの支援のための制度ではありせん。
よくみられるケースは認知症の方や、知的障害、精神障害をお持ちの方のケースです。
難しい判断を迫られた際、自己決定か難しい、あるいは不可能な方の支援を行います。
成年後見制度には、本人の判断能力に応じて、3つの類型があります。
どの類型にあたるかは、医師の診断書や、場合によっては医師の鑑定によって判断されます。
後見・・判断能力が欠けているのが通常の状態
(日常的な買い物も自分でできない程度)
保佐・・判断能力が著しく不十分な方が対象
(不動産・自動車の売買・自宅の増改築、金銭の貸し借りなど、重要な財産行為が自分ではできない程度)
補助・・判断能力が不十分な方が対象
(財産行為をある程度なら自分でできるが、本人の利益のため、誰かに代わってやってもらった方がよい程度)
それぞれの類型ごとに、制限される権利と、後見人、保佐人、補助人に付与される権限が異なります。
判断能力の低下が著しい後見は、本人のできることが限られるため、それに反比例して後見人の権限は大きくなります。
また、判断能力の低下が小さい補助は、本人のできることはまだまだ残されており、補助人はそれを補助するような意味合いに留まります。
以下では、これら3類型を含めて、「後見人等」と記載します。
利用例
判断が難しい方について、皆成年後見制度を利用しているかというと、そうではありません。
知的障害の方の場合、小さい頃は両親が親権者として様々な決定を行うことができます。
そのため、後見制度の利用は大きくなってからというケースが多くなります。
また、認知症の方の場合、明確な線引きは難しく、徐々に判断力が低下していくものです。
成年後見制度の利用がなくても日常生活を送れている方については、無理に利用する必要はないでしょう。
多くのケースにおいて、成年後見制度の利用を考えるきっかけがあるものです。
例えば以下のようなケースにおいては、制度の利用の必要性が顕在化します。
【ケース1】相続放棄がきっかけとなった事案
ご本人は兄から相続しましたが、判断力の低下により、相続をしたことすらよく理解できない状態でした。
しかし、兄は多額の負債を抱えてなくなっており、たくさんの債権者から本人に請求が来てしまいました。
判断能力の衰えたご本人では「相続放棄」の意味を理解できず、相続放棄を行えません。
このようなケースにおいては、このまま放置することで、ご本人の資産や年金の振り込まれる口座が差し押さえられる可能性もあります。
後見人を選任すれば、兄を含めた資産状況を調査し、必要に応じて相続放棄の手続きを行うことが可能となります。
※注意点として、一度選任された後見人は、基本的には本人が亡くなるか、判断能力が回復するまで業務は終わらず、相続放棄手続が完了しても終了となりません。
【ケース2】遺産分割協議がきっかけとなった事案
ケース1と近いお話ですが、遺産分割協議を行う際にも、後見制度が活用されます。
相続が生じると、遺言書がない限り、基本的には相続財産は相続人の方の間で共有の状態となります。
その財産を売却したり、処分しようとする場合などには、相続人全員の了解が必要です。
しかし、相続人の中に判断能力の低下した方がいれば、協議はできず、遺産分割が完了しません。
もしそうなれば、せっかくの遺産が分与できなかったり、活用できなかったりしてしまいます。
そのような場合には、成年後見制度を活用して後見人等を就け、その後見人等と遺産分割協議を行うこととなります。
この場合の注意点として、後見人等は本人のために業務を行うため、他の相続人の希望を聞いてくれるわけではありません。
また、他の相続人の方は本人と利益が対立してしまうことから、後見人等にはなれません。
【ケース3】施設入所の必要性がきっかけとなるケース
判断能力が低下している方であっても、親族が自宅で支援をしてくれ、問題なく生活できていれば、後見人等が就いていなくとも支障はないでしょう。
しかし、例えば寝たきりになって介護が必要になり、施設に入所しなければならないとなった場合、問題が生じます。
もちろん、ご親族の方が変わりに契約することでも差支えないという施設であれば問題はありません。
しかし、そのような協力が得られる親族がいないとか、本人との契約限定である施設の場合には、ご本人に判断能力がないことで入所を拒否されてしまうことがあります。
そのような場合には、後見人等を就けることで、後見人等が本人に代わって施設への入所契約を交わすことが可能となります。
【ケース4】消費者被害等がきっかけとなるケース
最近は、一人暮らしをしている高齢者が増えています。
中には、久々に親族の元を訪れたら、よくわからない健康食品を大量に購入している、通販番組で大量に商品を購入しているような問題に直面した方もおられるかもしれません。
判断能力が落ち込むと、計画的な金銭の利用が困難となり、不必要なものを大量に購入してしまうことがあります。
金銭的に支障がなければいいのですが、それで生活費が圧迫されるとなれば死活問題です。
しかし、親族が遠方に居住していたり、頻繁に訪問できないような場合には、問題を解決することはそう簡単ではありません。
このような場合には、後見人等が就くことで、不要・不利な契約をしてしまっても後見人が取消権を行使し契約を無効にできたり、また、生活に必要な分以上の財産は後見人が管理するため、財産の流出も防げることがあります。
その他
その他にも、不動産の処分や保険金の受取、介護保険契約、自己破産等、判断能力を要する契約を行う場合などに、成年後見制度が活用されています。
誰が成年後見人になるの?
では、必要性が生じたとして、好きな方に成年後見人を任せられるのでしょうか。 例えば通常想定されるような財産管理を行う場合には、身近なご家族の方が後見人に選ばれるケースが多いです。 しかし、必ずしも希望が叶うわけではありません。 成年後見制度は、本人の権利を守るためのものですので、どの方を選任すれば本人の権利が守られるのか、裁判所は慎重に判断することとなります。
例えば親族間の紛争が激しい場合には、親族間の対立により後見人の業務を全うすることが難しくなります。 また、ご本人が訴訟提起されていたり、遺産分割などの法的な紛争を抱えている場合には、弁護士が後見人となる方が適切に業務を全うできます。 身体障害も抱えていたり、徘徊をしたりして、受け入れられる施設が限られるような場合には、社会福祉士の方が選任された方が、ご本人のためになるかもしれません。 このように、ご本人にとっての必要性に応じて、司法書士、社会福祉士、弁護士など、親族以外の専門職が後見人となることがあります。
手続きについて
成年後見制度を利用するには、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所への申し立てが必要です。
申立人となれるのは、四親等内の親族の方ですので、ほとんどのご親族が当てはまります。
その際、以下のような資料を揃えなければなりません。
1 裁判所所定の申立書への記載
2 財産目録の作成と財産資料の提出
(預貯金、保険、不動産、自動車、株式等、本人が保有している財産)
3 判断能力に関する医師の診断書(裁判所指定の様式)
4 本人を支援する福祉関係者が作成する本人情報シート
5 戸籍謄本(全部事項証明書)
6 住民票
7 登記されていないことの証明書(法務局)
8 収入印紙・郵便切手
これらは基本的な資料であり、その方の置かれた状況によっては、さらなる資料が必要となります。
しかし、子育てやお仕事など日常生活の合間に資料を集める場合には、結構なお時間を要するかもしれません。
せっかくそろえた資料を裁判所に持参したにも関わらず、多数の修正や追加書類を伝えられれば、心が折れる方もいるのではないでしょうか。
資料の中には住民票や診断書など、3ヶ月の期限が付されているものもあります。
ご自身での手続きが難しい場合には、弁護士が代理人となり、申し立ての手続きをお手伝いすることもできます。
後見人等の業務
後見人等が選任されたとして、どのような業務を行うことになるのでしょうか。
一般的な業務としては、本人の財産の管理があります。
本人が収入の範囲で生活ができるよう、日々の支出を管理することになります。
また、施設との契約、賃貸借契約、介護保険契約など様々な契約も、後見人等が行うこととなります。
これに加え、高額な財産の処分等も後見人等が行うことがありますが、重要な財産の処分については自由に処分ができるものではなく、裁判所に許可を得る必要があります。
また、1年に1回、裁判所に本人の財産状況を報告する必要もあります。
任意後見契約について
以上の成年後見制度と似た言葉として、任意後見というものがあります。
先ほど記載した通り、成年後見制度は、裁判所が後見人等を選任することになります。
裁判所が決めた後見人等に対しては、他の者を選任すべきであるとの異議を述べることもできません。
このような制度の在り方は、場合によっては本人の意に沿わない可能性すらあります。
例えば、私は誰かわからない人が後見人になるくらいなら、信頼のおける方に後見人をしてほしい、そのような希望がある場合には、任意後見の利用を検討されてはいかがでしょうか。
任意後見とは、判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分となった場合に備えて、自らが選んだ後見人に代理権を与える契約のことです。
自分の信頼する人を選ぶことや、必要な範囲で代理権を与えることができ、成年後見制度に比べ自由度は高くなります。
契約書は、公証役場にて「公正証書」にする必要がありますのでご注意ください。
また、本人の判断能力が不十分になった場合には、本人・親族・任意後見受任者らが、裁判所に任意後見監督人の選任を申立て、裁判所がそれを選任した時から、任意後見人の仕事を始まることとなります。
ただし、任意後見は、裁判所が選任する後見人(法定後見人)と異なり、取消権がありませんので注意が必要です。
つまり、例えば消費者被害に巻き込まれたような場合、法定後見人であればその取引自体を取り消すことができますが、任意後見人にはそこまでの権限はありません。
任意後見には、将来型、移行型、即行型といくつかの類型がありますので、詳しくお知りになりたい方は、是非お気軽にご相談ください。
以上、簡単にご説明させていただきましたが、後見制度は誰もが利用する可能性のある制度である一方で、理解が難しかったり、申し立てのための資料が多岐にわたってしまったりして、利用に対して億劫になる方もいるのではないでしょうか。
しかし、後見制度が利用できないまま時間が経過することで、大切なご家族の方に不利益が被ることもあります。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスでは、これまで成年後見制度に関するご相談を多数頂いております、豊富な取り扱い実績がございます。
制度の概要や利用方法を知るだけでも随分先行きが明るくなるはずです。
少しでも後見制度の利用をお考えの方は、まずは一度、弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスまでご相談ください。