不動産トラブル
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所では、不動産に関するトラブルについてご相談をお受けしております。
賃料不払い、建物明渡事件、建築に関する紛争、リフォームに関する紛争、土地建物売買トラブル、登記に関する紛争等、様々なトラブルがあります。
賃料不払いのケース以外にも、建物の老朽化による建替えの必要性がある場合や、他の用途での利用を検討されている場合等には、賃借人と交渉し、建物からの退去を求めなければなりませんが、当事者間では、そのような専門的な交渉が困難であるため、弁護士が介入し、建物明渡の交渉を行います。
当事務所では、不動産の明渡請求事件を中心に不動産に関する様々な事案のご相談をお受けしております。
【不動産】とは
民法上、不動産とは、土地及びその定着物と定められています(民法86条第1項)。土地は理解しやすいと思いますが、定着物とは継続的に土地に固着し、固着して使用されることがその物の性質と認められるものを意味します。建物は定着物として不動産として扱われます。なお、建築中の建物は、屋根瓦を葺き荒壁を塗り終わった段階で建物となる旨判断した裁判例があります。
不動産は一般的に価値が高いため、売買や賃貸借などの契約トラブルが訴訟まで発展することが少なくありません。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスにも、不動産トラブルに関する相談は多く寄せられています。現在、何らかの不動産トラブルでお悩みを抱えている方にとって、参考にして頂ければ幸いです。
【売買契約】
不動産の売買契約は、当事者の意思表示によって成立し、物権変動(所有権移転)も契約時に生じます。
そして、不動産の売買契約により、売主は不動産の引渡し、所有権移転、移転登記義務を負い、買主は代金の支払義務を負うことになります。
ところで、不動産取引において、当事者は、「売渡承諾書」や「買付証明書」という書面が交わされることがあります。「売渡承諾書」とは、物件の購入を希望する方に売り渡す旨を表明する書面、「買付証明書」とは、不動産の購入を希望する方が売主や仲介業者に対して当該不動産を購入する意思を表明する書面のことをいいます。そして、買付証明書提出者に対して、売渡承諾書を交付して、交渉を開始し、その後に詳細な条件を交渉し、正式な売買契約書を締結することになります。なお、買付証明書は、不動産の購入する希望を表明した書面にすぎませんし、売渡承諾書も当該不動産を売却してもよいという意思が表明されるものの、物件の特定、金額、支払時期、支払方法(住宅ローンを利用するかどうか)、契約解除の定めなど売買契約の基本的事項について、具体的に合意されていないため、買付証明書と売渡承諾書の取り交わしだけでは売買契約は成立していないことになります。
二重売買
上記のとおり、不動産売買契約は、当事者の意思表示のみによって成立するので、同じ不動産を既に契約した買主以外の第三者にも売却することも可能です。しかし、同一不動産に2人の買主は存在し得ません。
二重に売買された不動産に関し、その優劣を決するのは登記になります。民法177条は、「不動産に関する不動産の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することはできないと定めています。対抗することができないとは、権利者であっても登記をしなければ、当事者以外の者に対して、自分が権利者であることを主張できないということを意味します。その趣旨は、不動産を取得しても登記を怠ると、当事者以外の第三者(「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいいます。)が当該不動産の権利を主張してきた場合、自分が権利者であると主張できないという不利益を被るため、登記が促進され、その結果、登記には最新の権利関係が公示されることで取引の安全を図ることが期待されている。
二重売買により、登記を備えなかった者は、当該不動産の権利を主張することができません。この場合、権利を主張することができない買主は、売主との売買契約を解除して、売主に支払った売買代金の返還を求めることができます。また、売買契約に付随してかかった費用等に関して生じた損害も売主に対して請求することも可能です。
さらに、売買対象となった不動産の価格が高騰している状況下で、転売目的で当該不動産を購入した買主が、二重売買により登記を備えることができず、権利を主張できなかった場合、転売により得られた利益につき損害賠償請求できるかという問題がありますが、結論としては、債務者(売主)が、不動産を二重売買してほかの者に登記を備えさせた時点、当該不動産が高騰していることを知り得た場合には、売買価格ではなく高騰した価格で損害賠償請求が可能と考えられています。
手付
手付とは、売買契約の際に当事者の一方から他方に対して支払われる一定額の金銭です。通常、手付には、証約手付としての効果を有しています。証約手付とは、契約締結したことを証する趣旨で交付されます。
そのほかに、解約手付という趣旨、違約手付という性質を有することがあります。
解約手付とは、手付の金額だけの損失を覚悟すれば、相手方の債務不履行を覚悟すれば契約を解除することができる趣旨で交付される手付をいいます。
通常、手付の授受があれば、解約手付の趣旨と解されています(最判昭24.10.4参照)。
民法557条第1項は、「買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りではない。」と定めています。
「契約の履行に着手した」とは
履行に着手したとは、債務の内容である給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識することができるような形で履行行為の一部をなし、または、履行の提供をするために欠くことができない前提行為をした場合をいいます(最大判昭40.11.24参照)。
履行の着手に該当するかどうかは、当該行為の態様、債務の内容、履行期が定められた趣旨・目的等諸般の事情を総合的に考慮して判断されます(最判平5.3.16参照)。例えば、買主が、代金の支払のために銀行から資金を借り入れる準備をした場合や履行期前に銀行から融資に応じる旨通知を受けた場合は履行の着手にはあたりませんが、履行期前に代金を提供した場合や履行期到来後に売主に対してしばしば明け渡しを求め、この明け渡しがあればいつでも代金の支払ができる状態にあった場合は履行の着手があったとされます。
売買契約が合意で解除された場合、特段の事情のない限り、手付を交付した買主は、交付した手付金を不当利得として返還請求することができます。
不動産の売主の倒産
買主が手付金を支払っていたにもかかわらず、不動産の売主が倒産した場合、その手付金はどうなるのでしょうか。
この場合、不動産会社の破産(倒産)手続きにおいて、裁判所から選任された破産管財人が本件売買契約を解除するという選択をした場合、手付金を交付した買主は、破産法54条2項により、同金額を財団債権者として、破産手続きにおいて、返還請求することができます。ただし、売主は債務超過に陥っているため、実際に返還されるとは限りません。
なお、宅地建物取引業は、営業を開始するにあたり営業保証金を供託していると思われますので、その営業保証金の範囲内において、返還を受ける可能性があります。その返還に際しては、破産管財人から債務承認書を取得して供託金の払い渡しを請求することになると思われます。
建築条件付土地売買契約
建築条件付土地売買契約とは、土地の売買契約を締結するにあたって、その土地の売主が自己または自己の指定する建築業者と一定期間内に建物の建築請負契約を結ぶことを条件とする契約をいいます。建築条件付土地売買契約は、建物の建築請負契約が締結に至らなかった場合、土地の売買契約は無条件で解除されます。
民法130条について
民法130条は「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる」と定めています。
例えば、土地の買主が故意に建築請負契約締結を妨げた場合、土地売主は、建築請負契約が成立したものとみなすことができます。過去の裁判例では、建築条件付土地売買契約を締結した買主が、同契約の締結後に示されたプラン図が契約締結時に示されたプラン図と方位等が異なっていたことやその後の建築請負業者の対応や説明不足に起因する不信感・不安感の増幅により、建築請負契約を取り止めた事案において、買主が建築請負業者に対し不信感・不安感を抱いた理由を詳細に検討し、買主が故意に建築条件の成就を妨げたものではないと判断した事案があります。
ローン特約
不動産売買契約において、現金で一括購入するケースは多くなく、通常、買主は、金融機関からのローンを利用して売買代金を準備することが多いと思います。
それでは、売買契約を締結したものの、金融機関のローン審査が下りなかった場合はどうなるのでしょうか。
通常、不動産売買契約書には、住宅ローン利用の場合の特約を設けられています。住宅ローン利用特約とは、当該不動産売買契約は、買主が住宅ローン借り入れを条件として締結するものであって、万が一、住宅ローン借り入れが否認されたときは、買主は本件売買契約を解除することができるとする定めです。
上記特約の趣旨は、一般人が不動産を購入する場合に金融機関からの融資を受けて売買代金の一部に充当するという通常の取引形態において、買主の責めに帰すべからざる事由によって住宅ローンの融資を受けることができなかった場合にまで手付金の没収や損害賠償の義務を負わせることは買主に酷であるため、このような場合には無条件での解除を認めて買主を保護しようとする点にあります。
したがって、買主が金融機関に提出した必要書類に虚偽の記載があった場合や故意に住宅ローン審査に落ちるような事情があった場合は、住宅ローン特約による解除はできない旨定められていることが多いと思います。
クーリング・オフ
住宅展示場などを訪問した際、その場の雰囲気で購入意欲がかきたてられ、冷静を欠いたまま購入申し込みをしてしまうことがあるかと思います。その後、冷静さを取り戻し、購入申し込みを撤回したい場合、クーリング・オフ制度を利用することができます。宅地建物取引業法37条の2は、以下の条件のもと、不動産購入の申し込みの撤回または不動産売買契約の解除を行うことを定めています。
➀ 宅建業者自らが売主である売買契約であること。
宅建業者が宅建業者以外の者を売主をとして仲介した場合は、クーリング・オフの対象とはなりません。
② 買受の申し込みまたは契約の締結が宅建業者の事務所等以外の場所で行われたこと。
買主が自ら自宅での申込や契約締結を望んだ場合はクーリング・オフの対象とはなりません。
クーリング・オフの適用除外となる場所は、専任の宅地建物取引士を置くべき場所に限定されています。
「事務所」については、契約締結権限を有する者及び専任の宅地建物取引士が置かれ、また、その施設も継続的に業務を行うものとされていることから、同所における取引は安定的であるとみられることからクーリング・オフの対象外とされています。
その他、事務所以外の場所で、国土交通省令・内閣府令で定める場所についても、クーリング・オフの対象外とされているところがあります。その一つとして「案内所」(宅地建物取引業施行規則16条の5、1項ロ)があります。国土交通省が示した「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によると、「案内所」とは、いわゆる駅前案内所、申込受付場所等をも含むものであり、 継続的に業務を行うことを予定しているものではないが、一定期間にわたって宅地建物の取引に係る業務を行うことが予定されているような施設を指すものとされています。なお、クーリング・オフ制度の適用が除外される案内所を「土地に定着する建物内に設けられるもの」に限定しており、別荘地等の販売におけるテント張り、仮設小屋等の一時的かつ移動容易な施設はこれには該当しないものとされています。しかしながら、マンション分譲の場合のモデルルームあるいは戸建分譲の場合のモデルハウス等における販売活動は、通常適正に行われる営業活動であると考えられるので、本号ロに規定する「案内所」と解して差し支えないとされています。
③ クーリング・オフ制度について、それを行使することができることの告知を受けた日から8日を経過していないこと。
上記8日の起算点は、クーリング・オフができる旨及びその方法が記載された書面の交付を受けた日からです。また、クーリング・オフの通知は、8日以内に発信すれば足り、8日以内に売主に到達している必要はありません。
なお、クーリング・オフができる旨及びその方法が記載された書面を交付されていない場合は、クーリング・オフ期間は進行しません。
④ 買主が不動産の引渡しを受け、かつ、その代金の全額を支払っていないこと。
⑤ 申し込みの撤回や契約の解除を書面で行うこと。
クーリング・オフの効果
売主である宅建業者は、受領した金員を買主に返還しなければなりません。売主は、クーリング・オフを理由に違約金や損害賠償を買主に請求することはできません。
クーリング・オフの妨害について
宅地建物取引業者が、クーリング・オフの適用があるにもかかわらず、それができないと告げる行為やクーリング・オフをするには損害賠償や違約金が発生するなど告げる行為は、行政処分の対象になります。
不動産についてお悩みを抱えている方、不動産トラブルに陥っている方、どのような悩みでも大丈夫です。相談だけでも大丈夫ですし、初回相談料は無料で行っております。
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