ストーカー
ストーカー問題は、全く知らない人からのストーカーばかりでなく、身近な人が急にストーカーになるケースがあります。
全国ニュースでも何度も取り上げられていますが、ストーカー問題から殺人事件に発展するケースもあり、ストーカー問題が発生した場合、しっかり対応を検討していく必要があります。
ストーカーの被害にあったと感じたらまずは警察官にご相談下さい。警察より、警告を出してもらうことが重要です。
また、それでもストーカー行為が収まる様子がないような場合には、刑事事件化も検討する必要があります。
他方で、昨今、ストーカー規制は厳しく取り締まりされており、これまで交際していた相手の方に対し、別れた後も未練があったため、相手方が拒絶したにもかかわらず面会を求めてしまい、ストーカー規制法違反で逮捕された例もよくあります。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所では、これまでストーカーの加害者、被害者いずれのご相談も多数お受けしており、解決してきた実績があります。
ストーカーされているかもとご不安な方や、自分の行為がストーカーかもと思った方、ストーカーで刑事事件になってしまった方は、当事務所に一度ご相談下さい。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスでは、日々ストーカーに関する様々なご相談をお受けしております。
ストーカーに関するトラブルが生じた場合、当事務所までお気軽にご相談ください。
ストーカー規制法とは
一般に、ストーカーについて定めた法律といえば、ストーカー規制法が挙げられます。このストーカー規制法の正式名称は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。
ストーカー規制法の目的は、ストーカー行為等について処罰を含む必要な規制を行うとともに、その被害者への援助の措置等を定めることによって、個人の身体・自由・名誉に対する危害の発生を防止し、また同時に国民全体の生活の安全と平穏を図ることにあります。
平成12年にストーカー規制法が制定される前は、いわゆるストーカーを直接規制したり処罰したりすることができず、暴行や脅迫などの具体的な被害が出てからでなければ対応することが困難でした。そんな中、ストーカーを発端とした殺人事件などの凶悪事件が耳目を集め、これを背景として、ストーカー行為自体を規制し、被害者に必要な措置を講ずるストーカー規制法が制定されるに至りました。
規制されている対象行為
ストーカー規制法で規制の対象となっている行為は、大きく分けると、①「つきまとい等」、②「位置情報無承諾取得等」、③「ストーカー行為」、の3つです。
詳細は後述しますが、イメージとしては、①や②を繰り返すことが③にあたるという関係になっています。
つきまとい等
規制されている行為の1つ目「つきまとい等」とは、特定の相手への好意の感情(恋愛感情など)あるいはその好意の感情が満たされなかったことによる怨恨の感情を充足する目的で、その特定の相手やその人と社会生活において密接な関係を有する人(配偶者、親、子、パートナー、恋人など)に対して、次の8つの行為のいずれかを行うことをいいます。
つきまとい行為、待ち伏せ行為など
つきまとったり、待ち伏せしたり、進路に立ちふさがったりすること。また、住居、勤務先、学校など、その人が通常いる場所の近くで見張りをしたり、そこに押し掛けたり、その付近をみだりにうろついたりすること。
相手の家の前を通り過ぎるときに短時間見て、相手が家にいるのか確認するような行為であっても、反復継続して行われれば「見張り」にあたります。また、こっそり庭や駐車場に立ち入るなど、相手に認識されないような態様であっても、「押し掛け」にあたります。
監視していると告げる行為
その人の行動を監視していると思わせるような事項を告げたり、それが相手に分かるような状態にしたりすること。
例えば、帰宅した際に「おかえり。」と電話したり、食事している際に「その○○美味しそうだね。」とメールしたりするのが、これにあたります。
面会、交際などの要求
面会、交際など、義務のないことを行うよう要求すること。
面会、交際以外に、例えばデートをすること、電話で会話をすること、メールを返すこと、プレゼントを受け取ることなど、義務のないことについての要求が広く含まれます。
乱暴な言動
著しく粗野な言動、著しく乱暴な言動をすること。
刑法上の暴行・脅迫に至らない程度であっても、大声で怒鳴りつけたり、車のクラクションを鳴らしたり、「死ね。」「殺すぞ。」などの言動をしたりすれば、これにあたります。
無言電話、電子メールの連続送信など
電話をかけて何も告げないこと。また、相手に拒まれたにもかかわらず、連続して、架電、文書の送付、ファックスの送信、電子メールの送信等をすること。
ここにいう「電子メールの送信等」には、いわゆるメールの送信のほか、携帯のSMSの送信や、LINE・X(旧Twitter)・Instagram・TikTok・FacebookなどのSNSによるメッセージ送信、SNSの相手のページにコメントを書き込む行為などが含まれます。
汚物などの送付
汚物、動物の死体など、著しく不快・嫌悪の情を催させるような物を送付したり、相手がその存在に気付くような状態にしたりすること。
名誉を害する事項を告げる行為
その人の名誉を害する事項を告げたり、それが相手に分かるような状態にしたりすること。
刑法上の名誉棄損・侮辱と異なり、不特定多数の人に触れ回る必要はなく、その相手に告げるだけでこれにあたります。
性的羞恥心を害する行為
その人の性的羞恥心を害する事項を告げたり、それが相手に分かるような状態にしたりすること。また、その人の性的羞恥心を害する文書、画像、動画などを送付・送信したり、相手がそれに気付くような状態にしたりすること。
位置情報無承諾取得等
規制されている行為の2つ目「位置情報無承諾取得等」とは、「つきまとい等」と同様に、特定の相手への好意の感情やそれが満たされなかったことによる怨恨の感情を充足する目的で、その特定の相手やその人と社会生活において密接な関係を有する人に対して、承諾を得ずに位置情報を取得したり、承諾を得ずに位置情報を記録・送信する装置を取り付けたりすることをいいます。
例えば、無断でGPS機器を自動車や所持品に取り付ける行為や、スマートフォンを勝手に操作して位置情報を盗み見る行為がこれにあたります。
ストーカー行為
規制されている行為の3つ目「ストーカー行為」とは、同じ人に対して、「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」を反復して行うことをいいます。ただし、「つきまとい等」のうち、上記(1)から(4)までと、(5)の「電子メールの送信等」については、身体の安全、住居等の平穏、名誉が害されるのではないかと不安を覚えさせるような方法、あるいは行動の自由が著しく害されるのではないかと不安を覚えさせるような方法により行われた場合に限られます。
「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」を繰り返し行うことが必要であるため、例えば職場から出てくるのを1度待ち伏せただけでは「ストーカー行為」にはあたりません。
規制の内容
「つきまとい等」と「位置情報無承諾取得等」については、これらを行って、その相手に対し、身体の安全、住居等の平穏、名誉が害される不安を覚えさせること、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせることが禁止されています。
また、「ストーカー行為」については、これを行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することとされ、刑罰の対象になっています。
さらに、「つきまとい等」「位置情報無承諾取得等」を行って相手に不安を覚えさせるおそれがある人や、「ストーカー行為」を行うおそれがある人に対して、そのことを知っていながら、被害者となり得る対象者の氏名、住所などのストーカー行為等に必要な情報を提供することも禁止されています。
警察等の対応
ストーカー被害を受けて警察に相談した場合、警察としてはどのような対応ができるのでしょうか。
ストーカー規制法で定められている主要な対応方法としては、①警察本部長等による警告、②都道府県公安委員会による禁止命令、の2つが挙げられます。
また、当然のことながら、刑法その他の法律に違反して犯罪行為にあたる場合は、ストーカー規制法とは別に捜査の対象になり得ます。
警告
警視総監や道府県警察の本部長、警察署長は、「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」を行った人に対して、もうしないように警告を出すことができます。
その前提として、被害者から、「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」の被害に遭っており警告を出してほしい旨の申し出を受けることが必要です。
被害者の申し出を受けた警察本部長等は、実際に「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」が行われているのか、それによって被害者に対し、身体の安全や住居等の平穏などが害される不安を覚えさせているのか、またさらに繰り返しそのような行為を行うおそれがあるのか、を判断します。そしてその結果、警察本部長等がそのいずれも認められると判断した場合には、加害者に対して、さらに繰り返し「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」を行ってはならない旨の警告を出すことができることとなります。
警察本部長等による警告は、警告書という書面を交付する方法で行われるのが原則です。ただし、実際の被害状況などを考慮して、警告書を交付する時間がない緊急の場合には、口頭で警告を行うことができます。この場合は、事後に警告書が交付されることになります。
警告書は書式が決まっており、警告を受ける人の住所、氏名、生年月日のほか、警告の内容や警告をする理由が記載されることになっています。
警告自体には、対象となった人を制約したり、警告を破った人に処罰を与えたりするような強制力はありません。ただし、警告が出されたということは、少なくとも警察としてはストーカー規制法違反の疑いを抱いていることになります。警告書の内容やこれまでの言動を踏まえ、改善を行わなければ、今度は禁止命令や処罰の対象となるおそれがあります。
警告が出された段階で弁護士に相談し、助言を受けることをお勧めします。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所では、警察から注意をされたのですが・・・というようなご相談もお受けしております。どのような状況であっても、まずは一刻も早く当事務所までご連絡ください。
禁止命令
都道府県公安委員会は、「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」を行い、被害者に身体の安全や住居等の平穏などが害される不安を覚えさせている人に対して、そのような行為をもうしないように禁止命令を出すことができます。
禁止命令も、被害者からの申し出を受けて出されるのが通常です。しかし、警察本部長等による警告とは異なり、被害者から申し出がない場合でも、公安委員会の職権で出すことができます。
禁止命令を出すにあたって公安委員会が考慮すべき要素は、警察本部長等による警告の場合と同様です。「つきまとい等」や「位置情報無承諾取得等」が行われているのか、それによって被害者に対し、身体の安全や住居等の平穏などが害される不安を覚えさせているのか、またさらに繰り返しそのような行為を行うおそれがあるのか、です。そのいずれも認められれば、公安委員会は、加害者に対して、さらに繰り返しそのような行為を行ってはならない旨の命令を出すことができることになります。
ただ、手続の面で、警察本部長等による警告との大きな違いは、禁止命令を出すにあたって対象者に対して弁明の機会が与えられることです。原則として、公安委員会は、命令を出そうとしている人に意見を聞いたり質問したりする聴聞という手続を行わなければなりません。例外的に、被害者の身体の安全や住居等の平穏などが害されるのを防止するため緊急の必要がある場合は、先に禁止命令を出すこともできますが、その場合でも事後に意見を聞く機会を設けなければならないことになっています。
また、禁止命令には有効期間があります。その期間は命令を出した日から1年間です。
そのうえで、1年が経過してもなお禁止命令を継続する必要がある場合には、被害者の申し出か公安委員会の職権によって、有効期間を1年間毎に延長することができます。なお、有効期間を延長する場合にも聴聞の手続が必要です。
そして、公安委員会による禁止命令は禁止等命令書という書面を、禁止命令の有効期間延長は禁止命令等有効期間延長処分書という書面を、それぞれ交付や郵送等して行うのが原則です。ただし、その時間がない緊急の場合であれば、口頭で行うこともできます。また、加害者が受取もせず、住所が分からないため郵送もできないような場合には、公安委員会の掲示板にその人の氏名といつでも書面を交付する旨掲示する公示送達という手続をとることで、その人の手に渡ったのと同じように扱うこともできます。 この禁止等命令書や禁止命令等有効期間延長処分書についても書式が決まっています。その中には、命令を受ける人の住所・氏名・生年月日、禁止される事項、命令の有効期間、命令や延長をする理由が記載されます。
このように、公安委員会による禁止命令は、命令を出すための厳格な手続や効力の有効期間によって、慎重に利用されることになっています。これは、禁止命令の効力が強いため、命令を出される人の自由が不当に制約されないようにするものです。
禁止命令違反の罰則
公安委員会から禁止命令が出された場合、この禁止命令に違反すれば処罰の対象になります。
禁止命令に違反して「ストーカー行為」をした場合、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処することとされています。つまり、懲役の期間や罰金の金額の上限が、禁止命令が出されていない状態で「ストーカー行為」をした場合の2倍になっています。
また、「ストーカー行為」にあたらなくても、禁止命令違反の行為があれば、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることになります。
このように、禁止命令は、いわば最後通告です。禁止命令が出されたときには、禁止命令の内容や自己の言動を前提に、どう対処すればよいのか、また刑事事件にならないためにどう備えればよいのか、弁護士に相談のうえ、しっかり考えることが大切です。
最後に
警告や禁止命令を出された方の中には、それまで自分の行為がストーカーになるとは思っておらず、無自覚にストーカーになっていたという方も少なくありません。それらが出されて初めて、自分の行為が違法であったと気付くのです。
ただ、その段階であれば、まだ対応や備えを行うことができます。それにより刑事事件化を防げる可能性があります。まずは、自分の言動が本当にストーカー規制法違反にあたるのか、どう対応し、刑事事件にならないためにどう備えればよいのか、早急にご相談ください。
弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所では、ストーカーの加害者になってしまった場合のご相談を多数お受けしております。当事務所に一度ご相談ください。
また、当事務所では、反対にストーカーの被害に遭われている被害者の方のご相談もお受けしております。ストーカーをやめさせるためにどうしたらいいのか、あるいはストーカー被害によって体調を壊した、精神的損害を受けた、といったご相談にも、対応のアドバイスや加害者への責任追及のアドバイスをさせていただきます。辛い思いをして悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
一人で悩まず、新たな第一歩をわたしたちと。