弁護士ブログ
2023/05/06
器物損壊罪について
お酒に酔った勢いで、路上に置かれていたお店の看板を蹴って壊してしまったり、タクシーに乗った際、車内の座席を蹴って傷つけたりしたことで、逮捕される場合があります。このような行為は、「器物損壊罪」となります。
「器物損壊罪」とは、どのような犯罪なのでしょうか?
1 器物損壊罪とは
器物損壊罪は、他人の物をわざと壊したり、傷つけたりすることで成立する犯罪です。
例えば、看板を蹴って壊したり、窓ガラスを割ったり、車のタイヤをパンクさせたり、壁に落書きしたりする行為が該当します。
器物損壊罪は、刑法第261条に、「(略)他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」と定められています。
2 器物損壊罪の成立要件
器物損壊罪の成立要件として、
①犯罪の行為・・他人の物を損壊し、傷害すること。
➁犯意(故意)・・他人の物を損壊し、傷害する認識があること。
➂結果・・・・・他人の物が損壊又は傷害されること。
の3つの要件すべてを満たした場合、成立します。
⑴ 「他人の物」とは
「他人の物」とは、私文書・公文書や電磁的記録、建造物・艦艇を除いた、他
人の所有するすべての有体物をいいます。
⑵ 「損壊」とは
「損壊」とは、物の棄損、破壊のことをいい、物理的に器物の形状を変更又は
滅却させる行為のほか、ひろく物の本来の効用を失わせる行為をいいます。
例えば、食器に尿をかける行為のように、たとえ洗浄することで物理的に完全
に綺麗な状態になったとしても、事実上、感情的に使用するに堪えない状態にさせ
る行為も含まれます。
⑶ 「傷害」とは
「傷害」とは、ペットや家畜などの動物を傷つけることをいいます。
動物を殺傷することは勿論、鳥かごの蓋を開けて逃がしたり、養魚池の水門を
外して魚を流出させるような行為も含まれます。
⑷ 「故意」とは
「故意」とは、意図的に他人の所有する物を壊したり、使い物にならなくした場
合をいい、器物損壊は故意がないと成立しません。
例えば、転んだ勢いで看板に倒れ掛かり壊してしまった場合などは、故意がな
いことから成立しません。
3 器物損壊罪は親告罪
器物損壊罪は、「親告罪」(刑法第264条)であり、被害者からの処罰を求める
意思(告訴)が必要となります。
「親告罪」とは、検察官が起訴するために被害者の告訴を必要とする犯罪をい
い、器物損壊は親告罪であることから、被害者から告訴がない限り、起訴されることはありません。
また、親告罪の告訴期間は6ヶ月(刑事訴訟法235条1項)となっていますの
で、犯人を知った日から6ヶ月を経過した後になされた告訴は無効となります。
4 刑罰
器物損壊罪の刑罰は、「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」となっています。
器物損壊罪は、親告罪であることから、被害者などからの告訴なければ、処罰
されることはありません。
5 器物損壊罪に該当する行為の事例
〇 物理的に壊す事例
・隣の家に石を投げ、窓ガラスを割る行為
・車のタイヤに尖ったものを刺しパンクさせたり、車体に傷をつける行為
・店の看板を蹴ったり、叩いたりして破壊する行為
・花壇の花を取って捨てたり、桜の木の枝を折って捨てる行為
・自動販売機の両替機を破壊する行為 など
〇 本来の目的として使用できなくする事例
・食器に尿をかける行為
・壁に落書きをする行為
・女性の着物や洋服に墨汁や精液をかける行為
・養魚池の水門を外して魚を流出させる行為
・いたずらや嫌がらせ目的で、他人の携帯電話などを持ち去ったり、別の場所に移動させ隠したりする行為
6 器物損壊事件で逮捕や起訴されない方策
器物損壊事件で逮捕された場合や警察等の捜査機関から捜査を受けている場合は、被害者が告訴をしないように被害者と交渉することが必要であり、そのためにも早期に被害者に謝罪し、被害弁償を行い、被害者との示談を成立させることが重要となります。
器物損壊事件では、出来るだけ早期に刑事事件に強い弁護士に相談し、被害者との示談交渉などの弁護活動を依頼することをお勧めします。
7 示談のための弁護士の活動
⑴ 早期の示談成立
器物損壊事件では、検察官が起訴・不起訴を判断する前に、被害者と示談交渉を
成立させることで、不起訴処分となる可能性が高くなります。
器物損壊罪は親告罪なので、被害者から「告訴しない」、「告訴を取り下げる」と
の内容の示談が成立すれば、不起訴となります。
しかし、示談交渉を加害者本人やその家族の方が被害者と進めようとしても、捜査機関から被害者の連絡先等を教えてもらえなかったり、直接の接触を拒否され、示談交渉に応じてもらえないことがあります。
弁護士であれば、捜査機関を通じて、被害者の連絡先を入手したり、被害者の
被害感情に配慮した示談交渉を進めることで、早期に示談が成立する可能であり ます。
⑵ 起訴された場合も執行猶予や刑の減軽
起訴された場合でも、弁護士は被害者との示談交渉を続け、示談が成立すれば、
裁判官に執行猶予付き判決や刑の減軽を求めていきます。
また、たとえ示談が成立しなかった場合でも、被害弁償や被害者に対する謝罪を
することで、刑の軽減を求めていきます。
⑶ 適切な示談金額や効果的な示談書の作成
加害者本人やその家族の方が、直接被害者などと示談交渉をしようとすると、被害者の感情を刺激したりし、さらなるトラブルに発展する可能性もあります。
また、適切な示談金の額や効果的な示談書の作成方法も分からないまま、相手の要求をそのまま受け入れ、法外な慰謝料を請求されたり、告訴の取り下げ条項等の宥恕文言を入れなかったことで、起訴されてしまうこともあります。
示談交渉を弁護士に依頼することで、弁護士が被害者の被害感情に配慮した示談交渉を進め、適切な示談金の額や効果的な示談書を作成し、早期に示談を成立させることができます。
器物損壊事件でご家族の方が逮捕されたり、捜査機関からの捜査を受けている方
は、出来るだけ早く、当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスにご連絡ください。
当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスでは、多くの刑事事件を取り
扱っており、刑事事件に経験豊富な弁護士が、早期に示談交渉を行い、身柄釈放や不起訴処分などを求めて、弁護活動を行っていきます。
まず、当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスにお問い合わせください。
一人で悩まず、新たな一歩をわたしたちと!
New Entry
Archive
- 2024 / 10
- 2024 / 06
- 2024 / 04
- 2024 / 03
- 2023 / 12
- 2023 / 11
- 2023 / 10
- 2023 / 09
- 2023 / 08
- 2023 / 07
- 2023 / 06
- 2023 / 05
- 2023 / 04
- 2023 / 03
- 2023 / 01
- 2022 / 12
- 2022 / 09
- 2022 / 08
- 2022 / 07
- 2022 / 06
- 2022 / 05
- 2022 / 04
- 2022 / 02
- 2022 / 01
- 2021 / 12
- 2021 / 11
- 2021 / 10
- 2021 / 09
- 2021 / 08
- 2021 / 07
- 2021 / 06
- 2021 / 05
- 2021 / 04