弁護士ブログ
2023/10/26
「性的グルーミング罪」って?
最近、芸能界での少年に対する性的加害が問題化されており、その報道などで、「グルーミング」という言葉を耳にします。
大人がわいせつ行為や性交等を目的として、未成年の子どもと親しくなって、手なづける行為を「グルーミング」と呼ばれています。
未成年の子どもを悪質なグルーミングによる性加害から守るため、「面会要求等罪」が新設されました。
1 「グルーミング」とは
「グルーミング」とは、本来、「動物の毛づくろい」という意味の英語(grooming)ですが、子どもに対して、まるで毛づくろいをするかのように子どもの警戒心を解き、子どもからの信頼を得て、その罪悪感や羞恥心を利用することなどで関係性を操り、性的な目的を達成しようとすることから、この言葉が使われるようになりました。
「性的グルーミング」や「チャイルドグルーミング」と呼ばれることもあります。
2 グルーミングの具体的な手口
⑴SNSを通じて、子どもの信頼を得て、性的行為に及ぶ。
X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどのSNSでは、小・中学生や高校生でも簡単にアカウントを開設することができるので、これらのSNSを通じて、アプローチし、やり取りする中で子供の信頼を得て行きます。
ある程度子どもの信頼を得た段階で、実際に会うことを提案して、言葉巧みに性交渉などへと誘います。
⑵元々近い関係にある者が、徐々にボディタッチからエスカレートさせ、性的行為に及ぶ。
例えば、学校の先生や家庭教師、スポーツなどのコーチ、保育士など信頼を得やすい職業などの立場を利用して、元々子どもと近い関係にある者が、「勉強を個人的に教えてあげる」、「あなたの才能を伸ばしてあげたい」など親切を装い、1対1で会うように誘います。その後、勉強を教える中で、リラックスさせるためと称して、肩をもむなど軽いボディタッチを行います。
その後、徐々に子どもへの言動をエスカレートさせていき、最終的に性的行為に及びます。
⑶公園などで子どもに声をかけて、徐々に親しくなり、自宅に連れ込み、性的行為に及ぶ。
公園などで遊んでいる子どもに声をかけて接近し、悩みなどの相談に乗るふりをして、子どもと親しくなり、自宅へ連れ込んで、性的行為に及びます。
3 16歳未満の者に対する面会要求等の罪(面会要求等罪)
未成年の子どもを性加害から守るため、令和5年7月13日から施行された刑法改正で、「面会要求等罪」が新設されました。(刑法第182条)
具体的には、わいせつ目的で、16歳未満の者に対して、面会を求める「面会要求罪」と、わいせつな映像の送信を求める「映像送信要求罪」があります。
⑴「面会要求罪」
⓵ 16歳未満の者に対して、わいせつ目的で、次のいずれかの手段を使って、会うことを要求すること。
・脅したり、だましたり、または誘惑して面会を要求すること
・拒否されたにも関わらず、繰り返し面会を要求すること
・お金などを渡したり、お金などを渡すことを提案したり、約束をして、面会を要求すること
⓶ ⓵の結果、わいせつの目的で、面会する行為
⑵「映像送信要求罪」
16歳未満の者に対し、性交等をする姿態、性的な部位を露出した姿態などをとってその写真や動画を送るよう要求する行為
但し、同世代同士の行為が処罰されないように、未成年者が13歳以上16歳未満の場合は、その者よりも5歳以上年長の者の行為のみが処罰の対象となります。
⑶面会要求等罪の罰則
⓵ 面会要求した場合
1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
※拘禁刑とは、これまでの懲役刑と禁固刑を一本化した刑罰。
拘禁刑は、2025年に導入予定で、それまでは懲役刑として扱われます。
⓶ 面会を要求し、実際に面会した場合
2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金
⓷ 映像送信を要求の場合
1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
⑷時効
「面会要求罪」・「映像送信要求罪」の時効は、いずれも3年です。
4 面会要求等罪の関連犯罪
⑴面会を要求して実際に面会し、16歳未満の者と性交等をした場合は、「不同意性交等罪」が成立します。
「不同意性交等罪」の罰則は、「5年以上(20年以下)の有期懲役刑」となっています。
⑵面会を要求して実際に面会し、16歳未満の者に対してわいせつ行為をした場合は、「不同意わいせつ罪」が成立します。
但し、被害者が、13歳以上の場合は、5歳以上年長の者に限り、「不同意性交等罪」又は「不同意わいせつ罪」が成立します。
「不同意わいせつ罪」の罰則は、「6か月以上10年以下の懲役」となっています。
⑶実際に面会して、自分の家に泊めた場合は、「未成年者誘拐罪」になることがあります。
「未成年者誘拐罪」の罰則は、「3か月以上7年以下の懲役」となっています。
⑷実際に面会して、深夜に連れ回した場合は、「青少年健全育成条例違反」となります。
「青少年健全育成条例違反」の罰則は、「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」となっています。
⑸それ以外にも、18歳未満の者の性的な画像や動画を頒布・製造・所持等する「児童買春・児童ポルノ禁止法違反」となることがあります。
子どもがグルーミングや性被害に遭っている疑いがある場合や子どもからこれらの被害の相談を受けた場合などは、お早めに、弁護士にご相談されることをお勧めします。
当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスでは、子どもの性被害に関するご相談をお受けしています。
子どもへの性加害について、加害者に対する刑事告訴や損害賠償請求をお考えの方は、当福岡オフィスのご相談ください。
また、子どもへの性加害の疑いで、警察に逮捕されたり、警察からの取り調べや呼び出しを受けている場合などは、速やかに、弁護士にご相談ください。
当弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所福岡オフィスでは、刑事事件に強い、経験豊富な弁護士が在籍しており、スピーディーに事案対応を致します。
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